資料調査報告(No.1) 2009年10月発行「電気部 装備機器の変遷」

3.航海システム

3-1.レーダ

1)1955年(昭和30年)頃のレーダ

三菱電機製

周波数 9320~9430MHz
指示方式 PPI 12.5”
尖頭出力 50KW 0.25μs
最小探知距離 80 m
分解能 50mで方位分解能2度

昭和27年頃から開発を始めた由 (無線工学ハンドブックの広告より)

アンテナ部 送受信機 指示機

2)1967年(昭和42)頃のレーダ

安立電波製(50KW, 12”, 100浬)

3)1967年頃のレーダ

日本無線製 (船舶用小型レーダ、JMA-148)
周波数 9330~9420 MHz 尖頭出力 10 KW

スロットアンテナ 表示部 7” ブラウン管

4)1980年頃のレーダ

(船舶運航のABC 成山堂書店 著者 坂井保也、池田宗雄)

5)2005年以降

レーダ指示器 日本無線製
表示部にカラー液晶パネルが用いられている。
ARPA (衝突予防レーダ) 日本無線製

3-2.ジャイロ・コンパス 及び オートパイロット

1)スペリー式ジャイロ・コンパス

(東京計器 MK14 MOD2)
(「船舶」1957年9月号より)

2)ジャイロット

東京計器 1968年頃
ジャイロとオートパイロットを一つのスタンドに組み込んだもの

3)2005年以降のジャイロ・コンパス

トキメック製 (TG-8000) 横河電子製 (CMZ900S)
二重化も可能とのこと
(参考) サテライト・コンパス
古野電気 (SC-110)
4.5″ LCD 方位精度 0.6°

4)オート・パイロット

トキメック製 横河電子製 (PT500)

3-3.測程儀 ログ

1)曳航ログ

船尾から曳航索でプロペラ部を流し、その回転数から船の航程を測定するもので、1965年(昭和40年)頃まで使われていた。

(写真は 航用測器学 東京高等商船学校教授 井関 貢 編 大正11年6月25日発行、昭和14年8月24日 4版より引用)

2)圧力式ログ

船底にピトー管を突き出し、それにかかる流圧を測定することにより速度を検出するもの。1963年(昭和38年)頃から使用されたが、電磁ログの出現で1970年頃からは余り使われなくなった。

3)電磁ログ

船底に磁界を発生するセンサーを突き出し、その磁界を切る海水流に比例した電圧により速度を検出するもの。 1967年(昭和42年)頃から装備され始めた。

横河電子製 EML500 (カタログより)
センサーは1軸(前後)と2軸 (前後・左右) がある。
船底からのセンサーの突出は 7mmと 250mmの2種類ある。

4)ドップラー・ソナー 及び ログ

船底の設置された送受波器から海底に超音波を発射し、反射波の周波数変化から船速を検出するもの。
1972年(昭和47年)頃から実用化された。 下の図は昭和47年頃のもの 古野電気製

表示機 送受信器 / 送受波器 作動原理図
2005年以降 表示にカラー液晶ディスプレイを使用
ドップラー・ログの表示 (LED)
表示部
・ドップラー・ソナー DS-30
(古野電気製)
ディスプレイ 10インチ・カラー
船 速 3軸表示
送信周波数 440KHz
表示部
・ドップラー・ソナー ログ DS-50
(古野電気製)
ディスプレイ LED
船 速 2軸表示
送信周波数 440KHz

ドップラーソナー指示機 装備状況 (日野丸 1972年頃)

一番手前がドップラーソナー指示機

3-4.磁気コンパス

1)トムソン式 磁気羅針儀

1925年頃のもの

2)端艇用コンパス

(写真は 航用測器学 東京高等学校教授 井関 貢 編 による)

3)トキメック SH-165

(2005年) (カタログより)

3-5.ロラン受信機

ロランは戦後アメリカから民間に開放された航行援助方式で、ロランA(2MHz帯)とその後(1965年頃)開発されたロランCがあるが、利用海域が北太平洋、北大西洋、日本近海と限られていたため、全世界をカバーする航法システムの開発が待たれていた。 それがオメガ、NNSS, GPSへと続く流れとなった。

ロラン受信機
(古野 LH-21 電子計数式)
(1958年頃)
ロランA/C
(1968年頃)
ロラン
光電 LR-715
(1970年頃)
ロランC 100KHz
測位精度 500m~5Km
2000年頃のものか、まだ使われている。

3-6.オメガ受信機

世界に8局の基地を設ければ、全世界をカバーできるので究極の測位システムと言われ、ギリシャ文字のZ に相当する Ω をその名に冠したと言われている。
1970年頃使われ始めたが、測位精度でその後現われたGPSに大きく劣るため、今は使われていない。

オメガ受信機
(1990年頃)
(JRC JLA-104)

3-7.NNSS(Navy Navigation Satellite System)

極軌道を通る人工衛星(高度 約1000Km)からの電波(150MHz、400MHz)を受信し、その周波数変化(ドップラー・シフト)を利用し船位を算出するもので、受信機、アンテナ、ミニコン、プリンター、キーボード から構成されていた。
電波として150MHz、400MHzの2波を使用するのは電離層による屈折の影響を除くためである。
1968年頃(昭和43年)から使用されたが、GPSの出現で姿を消した。

メーカとしてはITT, Magnavox が挙げられる。
当初は1800万円位したと記憶している。(1ドル 360円の時代であった。)
測位精度は数100mで、地図上のハワイの位置が実際とは異なっているのが分かったと当時評判であった。

NNSS
(1972年頃 基本航海計器 海文堂 米澤弓雄著)

ミニコンの上に受信機、プリンターがのっている。
プリンターが入出力インターフェイスを兼ねていた。

3-8.GPS受信機

古野電気のGPS受信機 (GP-150)
(2005年頃)
使用周波数 1575.42 MHZ
測位精度 15m 程度
いろいろな測位装置が開発されてきたが、GPSに勝るものはないと思われる。

3-9.無線方位測定機

遭難船が発射する電波(500KHz)を受信しその方向を探知するのが目的であったが、500KHzが廃止されたので、今は使われていない。
二つの放送局を受信しその方位が分かればおおよその位置が分かるし、目的の港の近くにある放送局を受信すれば進むべき方向が分かるので便利に使われていた。

DFループアンテナ DF受信機 (1968年頃) 光電 KS-500 (1970年頃)

3-10.音響測深機

古野電気 FE-700古野電気
FE-7006.5型カラー、周波数 50, 200KHz

3-11.舵角計

wheel House 前面の計器パネル
風向計 風速計 船速計 舵角計 時計 傾斜計

3-12.回転計

3-13.風向風速計

3-14.時計

(セイコー社のカタログより)

Chronometer 親時計(電気式) 子時計
無線室用時計 沈黙時間表示あり

3-15.電子海図表示システム (ECDIS)

1980年頃からCRTに表示する電子海図の作成が試みられていたが、ハード面、ソフト面から難しく処理能力の高いコンピュータや描画ソフトの開発が待たれていた。

古野電気
FEA-2107/FEA2807
20.1/23.1 型カラー

3-16.ブリッジ・コンソール

安立電気のコンソール (1968年頃) 日本無線の総合ナビゲーション・システム(2008年)
(舶用機関計画 便覧の広告より)
ECDIS, 総合管制表示(中央)、レーダ表示*3
(カタログより)
古野電気の BRIDGE CONSOLE VOYAGER

ページの一番上へ