資料調査報告(No.1) 2009年10月発行「電気部 装備機器の変遷」

5.無線システム

豪華客船タイタニック号の遭難が契機になり、1912年の国際無線通信会議にて決定された船舶の相互通信と遭難通信 500KHzの聴取義務は船舶無線局の基本として、その後長く受け継がれてきた。

もちろん その後の技術進歩は国際会議にて折り込まれ、割当周波数の増加、電波の質の規制、電信から電話への移行、送信機・受信機の技術的要件の規定が行われ、船舶無線局の要件は整えられてきた。

しかし1999年2月、GMDSS (Global Maritime Distress and Safety System)が採用され、VHF帯、MF/HF帯の遭難チャンネルを自動選択聴取するようになり、500KHzの遭難周波数は廃止され、船舶無線システムは根本的に変革された。

5-1.無線装置 (1999年以前)

この時代の無線設備は 主送信機、補助送信機、主受信機、補助受信機、オートアラーム、電源部(主電源と補助電源(バッテリーと充放電盤))などで構成されていた。

1)250W送信機

(JRC)

NMS-1050(1955年頃)
H910, W560, D460, WT140kg

2)250W中短波送信機

(安立電気)

ART-5333(1955年頃)

3)受信機

(JRC 、1955年頃)

NMR-1033 11球全波受信機
H230, W450, D330

4)受信機

(安立電気、1955年頃)

ARR-5403D 8球全波受信機

1)~4)は 船舶用送受信機 取扱の実際 オーム社 藤沢晴次著より

5)日本無線の送信機

1.2KW
中波、中短波、短波送信機
NSD-6形
(1968年(昭和43年)頃)

・発射電波形式
A1, A2, A3A, A3J, A3H
SSB (Single Side Band)
による電話通信可能

・周波数レンジ
中波 405 ~ 535 KHz
中短波 1,605 ~ 3,900 KHz
短波 4, 6, 8, 12, 16, 22,
25 MHz帯

・外形寸法
W1,000, H1,700, D457 mm

6)日本無線の全波受信機

NRD-515(1970年頃)
受信周波数 100KHz~ 30MHz

7)無線コンソール卓

(1970年頃、船舶無線艤装 成文堂書店 熊田浚一著(昭和54年2月)より)
昭和24年頃から無線機器の操作を集中して行うことができるように、コンソール式が採用されだした。
無線室の時計
(沈黙時間の表示あり)
無線コンソール(日本無線)
(「船舶」1957年12月号より)

5-2.GMDSS (Global Maritime Distress and Safety System)

船舶の無線局は1999年2月より下図のようなシステムに変わった。
下図は A3海域/A4海域を航行する船に要求される機器構成の一例を示す。 (古野電気の資料より)

インマルサットC船舶地球局設備

5-3.気象模写受信機 (Weather Facsimile)

船舶の航路の選定に当たっては気象情報が重要であり、昭和30年(1955年)頃までは船舶間の無線通信にて収集していた。
昭和30年3月、O社のふいりっぴん丸に NECのNEC―FH-61型ファクシミリが搭載され、荒天海域を避け航路選定に絶大なる威力を発揮したことにより、他社船でも採用されるようになったとのこと。

(「O社の無線小史」より)。

1)NECの Facsimile

(「船舶」1957年1月号より)

2)ファクシミリ

(1980年頃)

3)古野電気 FAX-408

(2005年頃)

4)気象衛星受画装置

古野電気 SU-28 (2005年頃)

5-4.船舶自動識別装置 (AIS)、 航海情報記録装置 (VDR)

SOLASにより2002年7月から商船に AIS(Automatic Identification System, 船舶自動識別装置)と
VDR(Voyage Data Recorder, 航海情報記録装置)の搭載が義務付けられた。

1)AIS

2)VDR

(フルノ60年史より)

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