(1)本書は、幕末(嘉永6年)の我が国造船黎明期から太平洋戦争に突入する昭和16年までの、我が国の船舶の歴史をたどった写真集である。編者である上野氏が序文で書かれているように、単に船の懐古的な写真にとどまることなく、船舶工学全般にわたり、いかに技術開発が進んだかが偲ばれるように編集されている。後半には年表が掲示されており、時代の変遷が分かりやすいように構成されている。また前後編に収録された船舶の名称の索引も添付されており、本書を辞書的に利用する際の便が図られている。さらに、松木哲氏による本書への寄稿も掲載されていて、本書の特徴がよくまとめられている。松木氏の寄稿にもあるように、本書は商船の紹介に軸足が置かれており、旧日本海軍全盛期にあったにもかかわらず、艦艇の紹介はない。松木氏も触れられているように編者の商船に対する思いがあるのかもしれない。本編の後には、造船関連企業等の広告が豊富に掲載されている。本書が発行された当時の、我が国の海事関連産業の力強さが感じられ、これも興味深い。

(2)「船舶百年史 前編」の内容概要は次の通りである(詳細は下記PDF「目次」参照)。

第1期 幕末時代(嘉永6年～慶応3年)
第2期 文明萌芽時代(明治元年～明治28年)
第3期 国力興隆時代(明治29年～大正8年)
第4期 国力躍進時代(大正9年～昭和16年)

目次

(3)船名索引
「船舶百年史 前編・後編」に掲載された船舶の船名一覧を下記PDF「船名索引」に示す。

船名索引