資料調査報告(No.12) : 2014年6月発行「フランス人の見た幕末・明治初期の和船」

Souvenirs de Marine の巻頭言 海事記録の保存 (1871 年より蒐集開始)

此の海事記録のコレクションは、現在の船舶や、忘れ去られ易い過去の船舶の記録保存を目的としますが、蒐集に当たっては正確性を第一義とし、一般受けし易いが不正確な絵画の様なものは残念乍ら省きました。 これ等の正確で完璧な資料や各図面は、後年に於いて船を再建造出来るほどの正確なデーターを有し、普通は失われ易い文献類も含んでいます。
私は、過去に於いて果たし、将来に於いても果たすべき航海の偉業に関する歴史的真実への関心が触発されることを望むものであります。

このコレクションは資料の受領順に編纂したもので、必ずしも体系的なものではありませんが、それぞれの資料は極めて精緻なものであります。
原型を失いつつある沿岸航路船や漁船から始めることに固執しましたが、現在の軍艦に就いては大部分は海軍省に保存されており、過去の軍艦に就いては模型修復の後、現在作図中であります。

全ての図面は大縮尺で書き、ルーブルのギャレーで展示された模型の製造に供された後、写真で縮小しました。 私も長年に亘る海軍の恩義に報いる為に複製画を寄贈いたしました。
私は海事に関心のある有識者の反応を期待して、本コレクションの冊子を内外の諸港湾市当局に贈りましたが、既にマルセイユ、バイヨンヌ、オランダ、デンマーク、スエーデンからの好い反響を得ました。

私は此のコレクションの有用性を認めた各国の造船所や海軍が、当方が既に入手済みのものと同様な、完全な設計図や資料を当方に寄贈されることを望みます、さもなければ私の目的は達成されず、不揃いなデーターは、その設計者や寄贈者にも耐え難い不快感を齎すでありましょう。 散逸した諸資料を完全に揃えるのが私の義務と思っております。

建造者達や航海者達が歴史的無頓着を克服して、その輝ける職業にたいする義務を果たすべく、私の呼び掛けに応じて下さることを望んでおります。

私は諸氏が歴史的な図面やデーター等を、散逸する前に私の元に提出される様に希望しますが、私は10年来、海事博物館の館長としてルーブルに在ります。
提供された諸資料は複写が済み次第、今迄と同様に全て提供者に返還し、加えて20部程度のコピイを提供者の便宜に供します。

更に、正確な模型の在処、博物館にとって興味深い書物や諸資料の所有者に関する情報等を知らせて頂ければ幸甚であります。 既に入手した資料を補完すべく、欠けている部分の入手を急いでいるからであります。

 

海軍中将、学士院会員 海事博物館館長
Edmond Paris

(巻頭言和訳 石津康二)

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