資料調査報告(No.5):2010年10月2日発行 雑誌「船舶」の掲載広告に見る船舶装備機器の変遷(電気部)

12.「船舶」昭和37年(Vol.35)の広告

1)S37-01
PYE TELECOMM. のVHF

・1)はPye Telecomm.のVHF無線電話で、見通し距離内の船舶間、船陸間の通信に使用されるもの。ヨーロッパ向き船舶へと書かれている。
この頃からVHFの無線電話が登場してきたものと思われる。

2)S37-02
セイコーの電子時計

・2)はセイコーの船舶用電子時計で、親時計-子時計方式のものが出てきて、船内の時計の調針が操舵室で一括可能となった。
それまでは船内各所の時計は人手で調針していた。

3)S37-03
JRCの無線装置

・3)はJRCの無線装置で、各種の装置が掲載されている。
この中でコースビーコンは余り利用されなかったのか装備した記憶がない。

4)S37-04
金崋山丸の ENG.CONTROL ROOM
5)S37-05
金崋山丸の主機操縦台

・4)は金華山丸
(三井造船玉野で建造、昭和37年11月27日竣工)のENG.CONTROL ROOMの写真。

・5)は主機操縦台。
この頃から主機リモコンが使用されだした。

6)S37-06
古野電気のオートロラン受信機

・6)は古野電気のオートロラン受信機。
トランジスタ式、消費電力28W,自動同期、機械部分なしとうたっている。

7)S37-07
東洋通信機の親子時計

・7)は東洋通信機の船舶用水晶親子時計。
2)のセイコーのものとほぼ同仕様のもの。

8)S37-08
古野電気のレーダ

・8)は古野電気のレーダで、主として漁船用、10インチ・ブラウン管を使用している。

9)S37-09
セイコーの親子時計

・9)はセイコーの親子時計、2)と同じものか。
子時計100個まで使用可能、船内の時間管理が一括できるようになった。

10)S37-10
古野電気のロラン、レーダ

・10)は古野電気のロランとレーダで、内容は6)と8)を合わせたもの。

11)S37-11
JRCの定時放送自動受信装置

・11)はJRCの定時放送自動受信装置で、気象放送、新聞放送、ラジオ放送など定時放送を自動受信するもの。

12)S37-12
佐渡春丸の主機操縦台
13)S37-13
佐渡春丸の独立監視室

・12)、13)は佐渡春丸の主機操縦台と監視室である。

佐渡春丸は日立造船因島で建造された船で昭和37年8月16日竣工。船主は新日本汽船。

14)S37-14
TICの水晶時計

・14)はTICの水晶時計で、この年に船舶用の電気時計が一気に出てきた感がする。

15)S37-15
川崎電機の電気推進装置

・15)は川崎電機の電気推進装置で、交流レオナード方式とある。

16)S37-16
山利丸の監視室
17)S37-17
山利丸の主機操縦台
18)S37-18
山利丸の操舵室

・16)、17)、18)は、山利丸の監視室、主機操縦装置、操舵室の写真である。

山利丸は日立造船桜島で建造された 11,750重量トンの貨物船で、船主は山下汽船、17次計画船である。

19)S37-19
野村商店のケーブル布設金物

・19)はケーブル布設金物で、新しいケーブル布設方法が開発された。
「船舶」 1962年6月号に新三菱重工業神戸造船所電気設計課の河井五夫氏による「チューブラハンガーによるケーブル布設法の紹介」との記事がある。

20)S37-20
東京電機の回転機

・20)は東京電機の発電機、電動機の広告で、直流機もまだ記載されているが、交流機が主流になったことを感じさせる。

交流発電機は自励式、他励式とある。(まだBrushless は現れていない。)

21)S37-21
三菱電機のウインチ

・21)は三菱電機の差動歯車ウインチでポールチェンジ式より軽量、安価と書かれている。

22)S37-22
見本市船「さくら丸」の主機操縦台
23)S37-23
見本市船「さくら丸」の機関制御室
24)S37-24
見本市船「さくら丸」の操舵室

・22)、23)、24)は巡航見本市専用船「さくら丸」の操舵室主機操縦台、機関制御室、操舵室の写真である。

主機遠隔操縦装置を中心にまとめられた写真である。

見本市船「さくら丸」は新三菱重工業神戸造船所にて建造され昭和37年10月15日に引渡された。

[メモ]

  1. 1)この年の新しいものとしては船舶電子時計が挙げられる。
    セイコー、東洋通信機、TICなどの主要メーカも勢揃いした。電子時計は水晶を使った時計で精度が高く、子時計を100個程接続でき、それらを操舵室の親時計で一括調針できるので、船内の時刻の管理作業は大幅に改善されたものと思われる。
  2. 2)この時代、主機リモコンは大きく進展した。
    金華山丸、佐渡春丸、山利丸、さくら丸の監視室、主機操縦装置、操舵室の写真がその様子を示している。
  3. 3)レーダ、ロランなどの航海電子機器の進歩も著しい。
    特にロランではトランジスタ化が進み、低消費電力となり、送信局の自動追尾、機械部分が電子計数方式に変わるなど高度な技術が取り入れられた。
  4. 4)チューブラハンガーなどのケーブル布設金物の広告が出ているのは珍しい。
    船舶に装備する電気機器が増え、それに伴いケーブルも増えたので、新しい電路工事法が求められていたことが窺える。

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