「籾山模型の魅力」 ~ 創業100年 父子二代で生み出した珠玉の艦船模型 ~
「籾山模型の魅力」 ~ 10. 籾山模型の技術的特長
船の科学館 飯沼一雄
作次郎氏は、昭和7年(1932)刊の雑誌『帝國工藝』(発行:帝國工藝会)第6巻第2号に「船舶模型の製作法と其の材料」と題した記事を寄稿している。
本記事によれば、まず竣工模型の縮尺は「実物の1/48を普通とす」と記している。ヤード・ポンド法では1フィートを1/4インチに換算して1/4“(インチ)と表記し10進法では1/48となる。英国では、この1/48が設計図書においても基本となっており、ちなみに1/8“だと1/96になる。しかし、後にわが国にメートル法が導入され定着すると、船舶設計や竣工模型の縮尺も10進法に基づく1/50、1/100が基本となった。
船体材料の木は「乾燥せる日本檜が最も良い」としており、これを積層し線図から起こした型紙を当てながら削り出し、内部を刳りぬいて適当な桟を入れるとしている。船体を支える飾足を付けるため、予め船底にナットを入れ込むと良いともしている。
また、塗装仕上げは、船体の黒及び赤は手間がかかっても日本古来の漆を用い、白、黄褐色(マスト・カラー)はエナメル又はラッカーを用い、甲板は板の継ぎ目を見せるため墨線を入れ、ラッカー仕上げにするとしている。
塗装については「モデル・シップと40年」に「実船よりやや明るめに塗装する」と記されているが、これは、模型サイズが小さくなるほど色調が濃く感じられる錯覚に対応するため、縮尺に応じて色合いを明るく調節せよと指摘しているのである。
金属部品は、真鍮で削り出し銀蝋接合するかネジ止め組立てとし、金メッキを施してさらにザボン・エナメルを薄く塗布して腐食を防ぐ。 こうした部品の船体への取り付けは手間がかかっても、鋲を用いるか根を付けてはめ込みとする、としている。
注目すべき部品としては、船首の揚錨機、荷役用のウィンチ、ベンチレーター、アンカー、プロペラ等であるが、特に荷役用のウィンチ等は大正期までギヤを始めとする複雑な機械類が蒸気駆動装置と共に露出しておりその再現力は籾山ならではの驚異的なものである。 その後、電動式が主流となり取扱の容易さや防食及び安全性に配慮してカバーが付けられるようになると、模型部品としても籾山らしさが発揮しにくくなったと言えよう。
こうした艤装部品の仕上りに注目すると、自ずと籾山模型の特徴や識別方法が理解できるようになるのではと思う。