ふね遺産

第1回ふね遺産

認定結果

歴史的価値のある「ふね」関連遺産を「ふね遺産」(Ship Heritage)として認定し、社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝える。「ふね遺産」を通じて、国民の「ふね」についての関心・誇り・憧憬を醸成し、歴史的・文化的価値のあるものを大切に保存しようとする国民及び政府・地方自治体の気運を高め、我が国における今後の船舶海洋技術の幅広い裾野を形成することをこの活動の目的とする。
なお、「ふね」の表記は、「船」だけでなく、和船などの「舟」も含める意味で、平がなにするものである。

現存船

日本丸

機関搭載浮揚状態で現存する
最古の日本建造練習帆船

所有者
横浜市(帆船日本丸記念財団管理)
保管場所
みなと博物館(神奈川県横浜市)

昭和5(1930)年に進水した、現存する日本で建造された航行可能な最古の帆船です。戦前・戦中・戦後を通し練習船として多くの船員を育成するとともに、現在も海洋教育の場として活用されています。また、日本で開発製造された初期の大型舶用ディーゼル機関を搭載し、舶用ディーゼル機関の国産化への先駈けとなりました。建造時の鋼材や構造・艤装様式がよく保存されており、設計図書、航海・機関・無線日誌等の資料も多数現存しています。


ガリンコ号1

スクリュープロペラの原型である
螺旋スクリュー推進流氷海域遊覧船

所有者
紋別市
保管場所
紋別市海洋公園広場

オホーツク・ガリンコタワー(株)によって、昭和62(1987)年から平成8(1996)年まで運航されたガリンコ号1(全長24.9m,全幅7.6m)は、三井造船(株)が開発した実験船を改造したもので、一般的な砕氷船と異なり、アルキメディアンスクリュー(円筒フロートの外周に螺旋状ブレードを巻きつけたもの)が回転し、氷板に食い込むことによって得られる反力により、砕氷して進む流氷海域遊覧船です。従来型砕氷船に比べ、高度な船体強度を要しないこと、砕氷に必要な馬力が小さくてすむこと、浅海域でも適用が可能なことが特徴です。この推進方式での遊覧船は世界的にも希少で、流氷で閉ざされた冬期間の地域経済の活性化と流氷海域に対する国民の意識向上に寄与しました。本船は陸上保管され、現在はガリンコ号2が運航されています。

復元船

復元菱垣廻船「浪華丸」

江戸時代の海運で活躍した
菱垣廻船の唯一忠実な実物大復元船

所有者
大阪市
保管場所
なにわの海の時空館(大阪市)

江戸期の経済を支えた弁才船(いわゆる千石船)の実物は一隻も現存しない中で、国立国会図書館所蔵の「千石積菱垣廻船二拾分一図」をもとに、形状,構造,材料から工法に至るまで可能な限り忠実に復元された、全長29.9m、幅7.4m、帆柱高さ27.5mの江戸期の和船の構造や建造技術を後世に伝える貴重な存在です。船大工等15名が建造にあたりましたが、現在では同等の技術を有したマンパワーを集めることは困難で、同規模の復元は今後極めて難しいと考えられます。また、海上運転を含め、現在の造船工学の観点から諸研究が行われ、弁才船の諸性能が明らかにされ、関係論文も数多く公表されています。

船舶に搭載された機器、設備

金華山丸の
ブリッジ設置機関
制御コンソール

機関自動化の先駆け金華山丸の
ブリッジ設置制御コンソール

所有者
(株)商船三井
保管場所
(株)商船三井 技術部技術研究所(神奈川県川崎市)

船橋から主機を直接操縦するブリッジコントロール方式と、機 関部の監視や制御を機関室下段のコントロールルームで集中的 に行う集中監視制御方式を採用した世界最初の自動化船「金華 山丸」は当時海運業が直面した乗組員不足と採算性追求の流れ の中で、昭和 36(1961)年に三井造船(株)が当時の三井船舶(株)向けに竣工しました。金華山丸に刺激されて自動化船の 建造意欲が盛り上がり、その後夜間機関室無人化は世界の趨勢 となりました。金華山丸は低船価・短納期を武器に、戦後わず か 10 年で世界のトップの座に躍り出た日本の造船業が、技術力でも遂に世界の頂点に立ったことを示した金字塔の一つです。

船舶の建造施設

旧浦賀船渠(株)のドック

明治期(1899年建設)の
ユニークな煉瓦積みドック

所有者
住友重機械工業(株)
保管場所
住友重機械工業(株)(神奈川県横須賀市)

浦賀船渠(株)は明治30(1897)年に榎本武揚らの提唱により設立され、明治32(1899)年にドライドックが建造されました(長さ180m、幅20m、深さ11m)。平成15(2003)年に浦賀工場は閉鎖されましたが本ドックは現存しています。側壁はレンガ積みで、ドライドックとしてその形式を残しており、船渠底まで確認可能となっているのは、我が国では本ドックのみであり、歴史的に貴重な遺産です。


下関旧第四港湾建設局船渠

我が国残存の最古級(1914年建設)
コンクリート製ドック

所有者
下関市
保管場所
下関市阿弥陀寺町
みなと博物館(横浜市)

大正期までのドライドックは石造が主体でしたが、本ドックは大正3(1914)年に竣工したコンクリート造の先駆的構造物で、我が国に現存する最古級の無筋コンクリート製ドライドック(全長54.3m,幅20.1m,深さ6.2m)です。
重要港湾の一つである関門港およびその周辺の開発・維持工事に多大な役割を果たした施設です。
現在、本ドックは埋め立てられて駐車場となっていますが、その外形形状が残るよう整地されています(写真下)。

船舶の研究関連設備、機器

東京大学船型試験水槽

我が国最古(1937年竣工)の
大学船型試験水槽

所有者
東京大学
保管場所
東京大学(東京都文京区)

本水槽は昭和12(1937)年に建設された、国内の大学が所有する現存船型試験水槽としては最も古い水槽であり、日本および世界の造船技術の発展に先導的な役割を担ってきました。世界中の船舶に影響を与えた船首形状の開発をはじめ数々の先進的な研究成果を生み出しており、船舶工学における流体力学の確立・発展に加えて、船舶の燃費・速力向上に役割を果たす様々な技術開発に多大な貢献をしてきました。現在も教育、研究設備として稼働中です。


船舶搭載型
航海性能計測コンテナ

世界に先駆けたオール・イン・ワン型
実船計測システム

所有者
横浜国立大学
保管場所
みなと博物館(神奈川県横浜市)

昭和46(1971)年に、当時のSR(大学,企業,研究機関などで構成された造船研究協会)にて実船計測用として発案・製作されました。
20フィートコンテナ内部を改装し、船体運動、加速度、船首変動水圧、衝撃水圧、軸トルク用の計測・記録機器を搭載し、ブリッジからの遠隔操作を可能としました。また、投棄式波高計による波高計測やレーダーによる波向計測も行われました。
実船試験は、実際の荷役作業中に短期間で準備せねばならず、また計測場所の確保も困難でしたが、コンテナ化によりそれらの問題を解決した画期的な設備となりました。
コンテナ船計測で7回使用され、またプラントバージの曳航輸送時の計測にも用いられました。

造船関連資料

平賀譲文書

明治・大正・昭和に亘る
40000点に及ぶ造船技術資料

所有者
東京大学
保管場所
東京大学柏図書館(千葉県柏市)

第13代東京帝国大学総長・海軍技術中将平賀譲博士が残された、明治23(1890)年頃から昭和18(1943)年頃までの資料で、海軍軍艦の図面、技術報告書、写真、東京帝国大学の経営に関する書類、個人の日記書簡など40000点に及びます。
平賀譲博士は海軍造船官として、日露戦争後の軍艦国産化の指導的役割を果たした。また同時に東大教授として後進の育成にあたり、のちに東大総長として戦争期の技術政策、大学教育システム整備にあたりました。軍艦の材料、溶接技術、生産技術などの旧海軍技術資料、東大での講義資料、粛学に関する日記など、技術史、教育史、海軍史上重要な資料です。
なお、本資料は平賀譲デジタルアーカイブとしてインターネット上で公開されています。

各遺産の見学は日本船舶海洋工学会の下記ウェブサイトをご覧ください。
第1回 ふね遺産の認定結果について | 日本船舶海洋工学会

第1回応募案件リスト

T…東部地区 K…関西地区 S…西部地区

No. 地区 案件 認定 備考
01 東部 T01 旧浦賀船渠のレンガ積ドック
申請書 添付資料
船舶の建造施設-1
02 東部 T02 平賀譲文書
申請書
造船関連資料-1
03 東部 T03 船型試験水槽(東大)
申請書 添付資料
船舶の研究関連設備、機器-1
04 東部 T04 帆船日本丸
申請書 添付資料
現存船-1
05 東部 T05 実船計測用コンテナ
申請書 添付資料
船舶の研究関連設備、機器-1
06 東部 T06 金華山丸のブリッジリモートコントロールスタンド
申請書 添付資料
船舶に搭載された機器・設備-1
07 東部 T07 アルキメディアンスクリュー推進活用の流氷海域遊覧旅客船(ガリンコ号)
申請書 添付資料
現存船-1
08 関西 K01 復元菱垣廻船「浪華丸」
申請書 添付資料1 添付資料2 添付資料3 添付資料4 添付資料5
復元船-1
09 関西 K02 ※資料閲覧にはパスワードが必要です
申請書 添付資料1 添付資料2 添付資料3 添付資料4 添付資料5
所有者辞退
10 関西 K03 来福丸
申請書 添付資料
11 関西 K04 さんふらわあ
申請書 添付資料1 添付資料2 添付資料3
12 関西 K05 第十とよた丸
申請書 添付資料1 添付資料2 添付資料3 添付資料4
13 西部 S01 コンクリート船防波堤
申請書 添付資料
14 西部 S02 サバニ
申請書 添付資料
15 西部 S03 若松港軍艦防波堤
申請書 添付資料
16 西部 S04 遠賀川五平太舟
申請書 添付資料
17 西部 S05 佐賀藩建造蒸気船「凌風丸」と製造施設
申請書 添付資料
18 西部 S06 クレーン船大金剛丸
申請書
19 西部 S07 ※資料閲覧にはパスワードが必要です
申請書
所有者辞退
20 西部 S08 250トン・ハンマーヘッド型クレーン
申請書
21 西部 S09 巡洋戦艦「霧島」(精密模型)
申請書
22 西部 S10 恵美須ヶ鼻造船所跡
申請書
23 西部 S11 下関旧第四港湾建設局船渠
申請書 添付資料
船舶の建造施設-2
24 西部 S12 練習船「霧島丸」遭難碑
申請書 添付資料

委員名簿

ふね遺産制定検討委員会(2015/9〜2016/3)

氏名 所属等 特記事項
茂里 一紘(委員長) 海上技術安全研究所 理事長 元広島工業大学長
広島大学名誉教授
内藤 林(幹事) 大阪大学 名誉教授 元学会長
シニアOS「造船技術・文化の保存」共同主宰
造船資料保存委員会(関西支部)委員長
平山 次清(幹事) 横浜国立大学 名誉教授 シニアOS「造船技術、文化の保存」共同主宰
新開 明二(幹事) 九州大学 名誉教授 シニアOS「造船技術、文化の保存」共同主宰
大和 裕幸 東京大学 教授 前学会長
平賀譲アーカイブ主宰
小嶋 良一 関西設計 顧問(前社長) 浪華丸復元実施
造船資料保存委員会 会員
田中 義照 海上技術安全研究所 研究統括主幹 東部支部 会務委員長
長谷川 和彦 大阪大学 教授 復元船浪華丸の保存活動
安東 潤 九州大学 教授 西部支部 副支部長

第1回ふね遺産審査委員会(2016年度)

委員長 原 壽 日本船舶海洋工学会会長
大松 哲也 日本マリンエンジニアリング学会会長
古莊 雅生 日本航海学会会長
安達 裕之 日本海事史学会会長
長谷川 和彦 ふね遺産認定実行委員会委員長
白木原 浩 日本船舶海洋工学会理事

(注)ふね遺産認定実行委員長補佐として小嶋良一関西地区主査も参加

第1回ふね遺産認定実行委員会(2016年度,2017年度)

委員長 長谷川 和彦 大阪大学名誉教授
平山 次清 横浜国立大学名誉教授
庄司 邦昭 東京海洋大学名誉教授 (元)航海学会会長
運輸安全委員会委員
茂里 一紘 広島大学名誉教授
(前)海上技術安全研究所理事長
(元)ふね遺産制定検討委員会委員長
内藤 林 大阪大学名誉教授
(元)日本船舶海洋工学会会長
小嶋 良一 関西設計顧問
浪華丸復元建造責任者・造船資料保存委員会メンバー
海事史学会理事
新開 明二 九州大学名誉教授
白木原 浩(2016〜2017/5) 日本船舶海洋工学会庶務理事
三菱重工業
小寺山 亘(2017/5〜) 九州大学名誉教授

ふね遺産認定実行委員会 三地区調査検討委員会(2016年度,2017年度)名簿

東部地区調査検討委員会委員
主査 平山 次清 横浜国立大学名誉教授
委員 庄司 邦昭 東京海洋大学名誉教授
委員 茂里 一紘 (前)海上技術安全研究所理事長
委員 大和 裕幸 海上・港湾・航空技術研究所理事長
委員 芳村 康男 北海道大学名誉教授
委員 川邊 寛 (元)防衛大学校教授
委員 寺尾 裕 東海大学名誉教授
委員 竹川 正夫 (元)住友重機械工業
関西地区調査検討委員会
主査 小嶋 良一 関西設計(株) 顧問
委員 池田 良穂 大阪府立大学名誉教授
委員 石浜 紅子 (元)なにわの海の時空館館長
委員 岡本 洋 (元)川崎重工(株)
委員 定兼 廣行 神戸大学名誉教授
委員 内藤 林 大阪大学名誉教授
委員 日夏 宗彦 大阪大学特任教授
委員 藤村 洋 (元)三菱重工業(株)
委員 増山 豊 金沢工業大学名誉教授
西部地区調査検討委員会委員
主査 新開 明二 九州大学名誉教授
委員 安東 潤 九州大学教授
委員 硴崎 貞雄 元三菱重工業
委員 小松 武邦 元三菱重工業
委員 重廣 律男 鹿児島大学水産学部教授
委員 慎 燦益 長崎総合科学大学名誉教授
委員 白木原 浩
(2016〜2017/5)
日本船舶海洋工学会庶務理事
三菱重工業
小寺山 亘(2017/5〜) 九州大学名誉教授

関連資料ダウンロード

第1回 「ふね遺産」 認定候補 推薦のお願い「ふね遺産」募集のお知らせ 募集用紙第1回応募案件リスト第1回「ふね遺産」認定式・ 記念講演 次第ふね遺産認定通知と認定式招待状の一例第1回ふね遺産の認定結果について第1回ふね遺産事業関係委員会名簿

2016年度 ふね遺産認定実行委員会議事録
※議事録閲覧にはパスワードが必要です

ページの一番上へ