ふね遺産

第4回ふね遺産

認定結果

歴史的で学術的・技術的に価値のある船舟類およびその関連設備を「ふね遺産」(Ship Heritage)として認定し、社会に周知し、文化的遺産として次世代に伝えるため、日本海洋船舶工学会はふね遺産認定事業を発足させました。
7月14日に実施したふね遺産審査委員会での審議により、新認定基準(2019年9月20日改定)に従い第4回ふね遺産認定案件として下記8件を決定しましたので、以下の通りお知らせいたします。
審査委員会委員(順不同、敬称略)は次の通りです。

日本船舶海洋工学会会長 三島 愼次郎(委員長)
日本航海学会会長 庄司 るり
日本マリンエンジニアリング学会会長 畔津 昭彦
ふね遺産認定実行委員会 委員長 小嶋 良一
日本海事史学会 会長 安達 裕之 (欠席)

 

第4回認定案件 所有者
「第五福龍丸」
西洋型肋骨構造による現存する唯一の木造鰹鮪漁船
公益財団法人 第五福龍丸平和協会
「MERMAID」
堀江謙一氏による初の太平洋単独横断に用いられた合板製キングフィッシャー型ヨット
San Francisco Maritime National Historical Park
「遠賀川五平太舟(川ひらた)」
江戸から明治期にかけて、遠賀川で使用され、産業発展に重要な役割を担った川ひらたの現存船
福岡県芦屋町歴史民俗資料館
福岡県立折尾高等学校
「日米船鉄交換船“Eastern Soldier”の図面原紙」
大正期の鋼船構造および当時の建造技術を今に伝える日米船鉄交換船の基本設計図原紙
株式会社JMUアムテック
「市川造船所造船資料」
幕末から昭和にかけての造船技術の変遷を伝える図面、図書、工具類一式
伊勢市
原子力船「むつ」
多くの技術的知見をもたらしたわが国初の原子力船
非現存船(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構に認定書贈呈)
「さんふらわあ」
わが国のクルージング・レジャー 大型豪華高速カーフェリーの先駆け
非現存船(商船三井フェリー株式会社に認定書贈呈)
「畿内丸」
昭和初期、日米航路の航海日数を大幅に削減し、本格的な高速ディーゼル貨物船時代をもたらしたパイオニア
非現存船(株式会社商船三井に認定書贈呈)

 

現存船

第五福龍丸

西洋型肋骨構造による現存する唯一の木造鰹鮪漁船

ふね遺産第25号(現存船第9号)

所有者
公益財団法人 第五福龍丸平和協会
保管場所
夢の島公園内 第五福竜丸展示館

第五福龍丸は和歌山県の古座造船所で鰹漁船として1947年に進水した後、1951年に清水市の金指造船所で鮪延縄漁船に改造された。本船は1954年にビキニ環礁水爆実験で被災したことでも知られる。
木造鰹鮪漁船は戦後の食糧難の時代に数多く建造されたが、本船は良い状態で保存された現存する唯一の実船である。肋骨を有する西洋型木造船の構造を今に伝える貴重な遺産でもある。
保存展示されている同船の搭載エンジンは新潟鉄工所製250PSで、141台製造された中で唯一現存するものとして貴重である。


MERMAID

堀江謙一氏による初の太平洋単独横断に用いられた合板製キングフィッシャー型ヨット

ふね遺産第26号(現存船第10号)

所有者
San Francisco Maritime National
Historical Park
保管場所
San Francisco Maritime Museum

当時一般的にディンギーで用いられていた合板をクルーザーに使用した本船は、堀江謙一氏がそれにより初めて単独太平洋横断を果たしたことで、キングフィッシャー型船型と相まってその優れた外洋航行性が証明された。
現在San Francisco Maritime Museumに保存されており、また航海日誌も現存する。50年以上にわたって、サンフランシスコ海事博物館は横山 晃氏設計のこの19’JOG(Junior Offshore Group)ヨットを保管展示し、その技術的、歴史的そして社会的意義を伝え続けている。


遠賀川五平太舟
(川ひらた)

江戸から明治期にかけて遠賀川で使用され、産業発展に重要な役割を担った川ひらたの現存船

ふね遺産第27号(現存船第11号)

所有者
福岡県芦屋町歴史民俗資料館
福岡県立折尾高等学校
保管場所
同上

江戸から明治期にかけて遠賀川およびその周辺の石炭輸送手段であった川ひらたの現存船である。河川専用の浅喫水船で、状態よく保存されており、当時の産業インフラとして重要な役割を担った歴史を今に伝える。
積載量は大型で9トン(長さ13m余、幅3m余)、標準型で6トン、小型で3トンであった。
天保年間には5,000隻、明治18年には8,800隻の存在が記録されているが、明治24年に鉄道が敷設されたことにより、急激に隻数を減じ、最後の1隻が昭和14年(1939年)姿を消した。

造船関連資料

日米船鉄交換船“Eastern Soldier”の図面原紙

大正期の鋼船構造および当時の建造技術を今に伝える日米船鉄交換船の基本設計図原紙

ふね遺産第28号(造船関連資料第5号)

所有者
株式会社JMUアムテック
保管場所
同上

播磨造船所にて1920年5月に完成した載貨重量10,625トンの貨物船 “Eastern Soldier”の基本設計図面原紙一式が100年余りを経て現承継会社のJMU アムテックにて保存されている。当時の造船設計能力や鋲接船の構造などの詳細を知ることができる。
第一次大戦中の船舶不足のアメリカ政府と日本造船業における鉄鋼不足を補完する為に、民間の努力で日米船鉄条約(1918年)の成立にこぎつけ、その対象となった対米輸出船 45隻の中の一隻が本船である。日米船鉄条約を具体的に示す歴史的意義をもつ貴重な遺産でもある。


市川造船所造船資料

幕末から昭和にかけての造船技術の変遷を伝える図面、図書、工具類一式

ふね遺産第29号(造船関連資料第6号)

所有者
伊勢市
保管場所
同上

伊勢の市川造船所が作成保管してきた安政5年から昭和53年までの62,080点の資料である。特に明治初期に始まる帆船、補助機関付帆船、機帆船、汽船と変遷する洋式木造船に関する多くの図面、関係書類は他にも例を見ない貴重な遺産である。
市川造船所は元禄15年(1702)創業とされ、昭和53年の倒産までの間多数の船舶を建造した。同社に残った貴重な造船資料は廃棄される恐れがあったが、旧市川造船関係者や故野本謙作大阪大学名誉教授らの努力により、平成26年2月に旧市川造船所労組から伊勢市に寄贈された。

非現存船

原子力船「むつ」

多くの技術的知見をもたらしたわが国初の原子力船

ふね遺産第30号(非現存船第4号)

所有者
非現存船
保管場所

1968年に起工、1969年進水、1991年に竣工した本船は、1995年に原子炉室が撤去されるまで、 設計/建造方法、運航方法、原子炉特性の把握、放射線遮蔽、解役方法、放射能汚染除去等、多くの原子力船に関する技術データを残した我が国唯一の原子力船である。
1991年から約一年、4回にわたる原子力動力の総航続距離は地球2周以上の約82,000キロメートルに及んだが、この距離を約4.2キログラムのウラン235で航行したこと、出港から入港まで放射性廃液を船外に排出することなく航行できることなどを実証した。


さんふらわあ

わが国のクルージング・レジャー
大型豪華高速カーフェリーの先駆け

ふね遺産第31号(非現存船第5号)

所有者
非現存船
保管場所

長距離カーフェリーはいわば陸上交通を補完する「海のバイパス」として発展してきたが、本船の出現はクルーズ客船なみの設備を持ったクルーズフェリーの先駆けとなった。その後、「さんふらわあ」の名称を冠したフェリーは数多く建造されたが、その第1船を認定するものである。
1972年に川崎重工業(神戸)で竣工した第1船は、垂線間長170m、総トン数11,311.99トン、航海速力24ノットであった。2軸2舵システムを採用し、バウスラスターやフィンスタビライザーを装備した高性能船で、船腹の「さんふらわあ」マークは現在でも受け継がれている。


畿内丸

昭和初期、日米航路の航海日数を大幅に削減し、本格的な高速ディーゼル貨物船時代をもたらしたパイオニア

ふね遺産第32号(非現存船第6号)

所有者
非現存船
保管場所

昭和5年三菱造船長崎造船所にて建造された。外国船社ディーゼル船の運航速度が当時13-14ノットであったのに対し18ノットを達成し、対米貨物輸送に大きな変革をもたらした。搭載された主機は国産(三菱Sulzer、2機2軸、8,262PS)で、垂線間長135.94m、載貨重量10,142トンであった。
本船は、日本から北米東岸への貨物輸送経路を舶車連絡(船舶+鉄道)からパナマ運河経由の直行ルートへ転換させ、物流イノベーションを起こす端緒となった。これ以後、日本船社が海外船社に先行して同航路において大型主機搭載船の建造を進め、独断場を築くこととなり、本船の存在が本格的な高速ディーゼル貨物船時代をもたらしたと言える。

第4回応募案件リスト

T…東部地区 K…関西地区 S…西部地区

No. 認定通し番号 地区 案件 推薦理由 所有者
了解
1 28 関西K01 日米船鉄交換船“Eastern Soldier”の図面原紙
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
<大正期の鋼船構造および当時の建造技術を今に伝える日米船鐵交換船の基本設計図原紙>
播磨造船所にて1920 年5 月に完成したDWT 10,625Tの貨物船Eastern Soldierの基本設計図面原紙一式が100年余りを経て現承継会社のJMU アムテックにて保存されている。当時の造船設計能力や鋲接船の構造などを知ることができる。
2 29 関西K02 市川造船所造船資料
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
添付資料4
添付資料5
添付資料6
添付資料7
添付資料8
添付資料9
<市川造船所に関する幕末から昭和にかけての図面、図書、工具類一式>
伊勢の市川造船所が作成保管してきた安政5年から昭和53年までの62,080点の資料である。特に明治初期に始まる帆船、補助機関付帆船、機帆船、汽船と変遷する洋式木造船に関する多くの図面、関係書類は他にも例を見ない貴重な遺産である。
3 25 東部T01 第五福龍丸
申請書
添付資料1
添付資料2
<西洋型肋骨構造による現存する唯一の木造鰹鮪漁船>
第五福竜丸は和歌山県の古座造船所で鰹漁船として1947年に進水した後、清水市の金指造船所で鮪延縄漁船に改造された。
船体は良い状態で保存され、搭載されたエンジン(新潟鉄工所製)も保存されている。本船は1954年、ビキニ環礁水爆実験で被災したことでも知られる。
管理者は了解
東京都は了承
4 30 東部T02 原子力船「むつ」
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
添付資料4
添付資料5
<わが国初の原子力船として、多くの技術的知見をもたらしたわが国初の原子力船>
1968年に起工、1991年に竣工した本船は、1995年に原子炉室が撤去されるまで、 設計/建造方法、運航方法、原子炉特性の把握、放射線遮蔽、解役方法、放射能汚染除去等、多くの原子力船に関する技術データを残した。
5 31 関西K03 さんふらわあ
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
<わが国のクルージング・レジャー 大型豪華高速カーフェリーの先駆け>
長距離カーフェリーはいわば陸上交通を補完する「海のバイパス」として発展してきたが、本船の出現は、クルーズ客船なみの設備を持ったクルーズフェリーの先駆けとなった。その後、「さんふらわー」の名称を冠したフェリーは数多く建造されたが、その第1船を認定する。
商船三井フェリー了解済
6 32 東部T03 畿内丸
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
添付資料4
添付資料5
添付資料6
添付資料7
添付資料8
添付資料9
添付資料10
添付資料11
<昭和初期、日米航路の航海日数を大幅に削減し、本格的な高速ディーゼル貨物船時代をもたらした先駆け>
昭和5年三菱造船長崎造船所にて建造された。外国船社ディーゼル船の運航速度が当時13-14ノットであったのに対し18ノットを達成し、対米貨物輸送に変革をもたらした。搭載された主機は国産(三菱Sulzer)であった。
7 26 関西K04 MERMAID
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
添付資料4
添付資料5
添付資料6
添付資料7
<初の太平洋単独横断に用いられた合板製キングフィッシャー型ヨット>
当時一般的にディンギーで用いられていた合板をクルーザーに使用し、初めて単独太平洋横断を果たし、キングフィッシャー型船型と相まってその優れた外洋航行性が証明された。現在San Francisco Museumに保存されており、また航海日誌も現存する。
8 27 西部S01 五平太船
申請書
添付資料1
添付資料2
添付資料3
添付資料4
添付資料5
<江戸から明治期にかけて、遠賀川で使用され、産業発展に重要な役割を担った川ひらたの現存船>
江戸から明治期にかけて遠賀川およびその周辺の石炭輸送手段であった川ひらたの現存船である。河川専用の浅喫水船で、状態よく保存されており、当時の産業インフラとして重要な役割を担った歴史を今に伝える。

(注)個人情報も含まれることから、第3回より認定案件の申請書および添付資料のみを公開することとし、また申請者名および連絡先を非公開としました。

委員名簿

第4回ふね遺産審査委員会

委員長 三島愼次郎 日本船舶海洋工学会会長
畔津昭彦 日本マリンエンジニアリング学会会長
庄司るり 日本航海学会会長
安達裕之 日本海事史学会会長
小嶋良一 ふね遺産認定実行委員会委員長

第4回ふね遺産認定実行委員会(2019年度)

委員長 小嶋良一 関西設計顧問、浪華丸復元建造責任者・造船資料保存委員会メンバー、海事史学会理事
委員 平山次清 横浜国立大学名誉教授
委員 庄司邦昭 東京海洋大学名誉教授 (元)航海学会会長、運輸安全委員会委員
委員 内藤林 大阪大学名誉教授、(元)日本船舶海洋工学会会長
委員 小寺山亘 九州大学名誉教授
委員 吉川孝男 九州大学名誉教授
委員 山本敦 日本船舶海洋工学会理事
アドバイザー 長谷川和彦 大阪大学名誉教授

ふね遺産認定実行委員会 三地区調査検討委員会(2019年度)名簿

東部地区調査検討委員会委員
主査 平山次清 横浜国立大学名誉教授
委員 庄司邦昭 東京海洋大学名誉教授
委員 茂里一紘 (元)海上技術安全研究所理事長
委員 大和裕幸 (前)海上・港湾・航空技術研究所理事長
委員 芳村康男 北海道大学名誉教授
委員 川邊寛 (元)防衛大学校教授
関西地区調査検討委員会
主査 小嶋良一 関西設計(株) 顧問
委員 池田良穂 大阪府立大学名誉教授
委員 石浜紅子 (元)なにわの海の時空館館長
委員 岡本洋 (元)川崎重工(株)
委員 伊藤政光 鳥羽商船高等学校名誉教授
委員 内藤林 大阪大学名誉教授
委員 日夏宗彦 大阪大学特任教授
西部地区調査検討委員会委員
主査 吉川 孝男 九州大学名誉教授
委員 小寺山亘 九州大学名誉教授
委員 硴崎貞雄 元三菱重工業
委員 慎燦益 長崎総合科学大学名誉教授
委員 安東潤 九州大学教授
委員 山口 悟 九州大学准教授

第4回ふね遺産 認定基準

第4回ふね遺産 認定基準

関連資料ダウンロード

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第4回ふね遺産認定実行委員会 議事録

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